鉄鋼分野の取り組みは、他産業の過剰解消や合理化に役立つはずだ。

莉穂のブログ、世界の粗鋼生産能力は2015年時点で23億トンに及び、6億トン以上が過剰とされる。
そのうち4億トン程度が中国の設備だ。
中国は内需で吸収できない鋼材を安値で輸出し、その量は昨年に1億トンを超えた。
国際市況の悪化で世界の鉄鋼メーカーはほとんどが赤字に陥っている。
輸入品に対し、新興国などが高い関税をかけて自国産業を守る保護主義的な動きも心配だ。
過剰問題へ の対応は急務といえる。
中国政府は20年までに1億~1億5千万トンの設備能力を削減する方針を打ち出した。
設備淘汰で生じる余剰人員の対策にも踏み込んだことは評価できる。
しかし、1億5千万トンを削減しても余剰解消には力不足で、計画通り進むかどうかも不透明だ。
日本は石油危機後の1980年代以降、鉄鋼産業などの構造転換に取り組んだ。
鉄鋼大手はグループ企業や立ち上げた新事業で余剰な人員を吸収し、政府は臨時措置法で企業の円滑なリストラを後押しした。
その経験を中国政府や鉄鋼産業に伝え、構造転換を促してもらいたい。
中国が過剰設備を解消するまでには時間がかかることを想定して、日本企業が再編を進め、競争力を強める対応も要る。
新日鉄住金は2月、日 新製鋼を子会社化し製品融通などで生産効率を高める計画を発表した。
中小企業の多い電炉鉄鋼メーカーも再編を進める必要がある。
世界的な設備過剰問題は鉄鋼にとどまらず、石炭やセメント、造船、電子部品など幅広い分野に及ぶ。
鉄鋼分野の取り組みは、他産業の過剰解消や合理化に役立つはずだ。